安全性

ファクタリングの償還請求権とは|24社の開示状況を調べた

ファクタリングの契約条件を読むとき、手数料や入金スピードに目が行きがちです。しかし、取引先が支払わなかったときに誰が損失を負うのかは、手数料よりも大きな金額が動きうる条件です。これを決めるのが償還請求権です。

このページでは、償還請求権とは何かを民法と金融庁の注意喚起から整理したうえで、当サイト掲載24社が公式サイトでこれをどう開示しているかを実際に調べた結果を一覧にします。あわせて、「ノンリコースと書いてあれば安心」とは言えない理由を、金融庁が紹介している裁判例から確認します。

償還請求権とは|倒産したとき誰が損をするか

償還請求権とは、売却した売掛債権が回収できなかったときに、ファクタリング会社が売主(利用者)に対して支払いを求めることができる権利です。これが無い契約をノンリコース、有る契約をウィズリコースと呼びます。

金融庁は償還請求権なしの状態を、「売却した売掛債権等が返済不能になっても売却した事業者に返済義務は生じないこと」と説明しています。

具体的にはこう分かれます。

  • 償還請求権なし(ノンリコース):売掛先が倒産して回収できなくても、利用者はファクタリング会社に支払う義務を負わない。損失はファクタリング会社が負う
  • 償還請求権あり(ウィズリコース):回収できなければ、利用者がファクタリング会社に支払う。実質的に、売掛先の信用リスクは利用者に残ったまま

売掛先が倒産する確率は高くありませんが、起きたときの金額は請求書の額面そのものです。手数料が数%変わるかどうかより、この一点のほうが影響は大きくなります。

償還請求権があると「売買」ではなくなる

なぜこの権利の有無が、単なる契約条件を超えて重要なのか。それは、ファクタリングが「売買」として成立するかどうかに関わるからです。

金融庁は、ファクタリングを「事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス(事業者の資金調達の一手段)であり、法的には債権の売買(債権譲渡)契約です」と定義しています。

民法(明治二十九年法律第八十九号)は、売買を次のように定めています。

売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。(民法第555条)

そして債権も譲渡できる財産権です。

債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。(民法第466条第1項)

売買であれば、買った物の価値が下がっても、買主は売主に「返せ」とは言えません。それが売買だからです。ところが償還請求権があると、回収できなかった分を売主が払い戻すことになる。これは売った物の価値を売主が保証している状態で、経済的には担保付きの貸付に近づきます。

金融庁はこの点を明確に指摘しています。譲渡した債権の回収がファクタリング業者から売主に委託されていて、売主が集金できなかった場合に、

  • 「売主が債権を買い戻すこととされている」
  • 「売主自身の資金によりファクタリング業者に支払をしなければならないこととされている」

といったものについては、貸金業に該当するおそれがあるとしています。貸金業を行うには財務局または都道府県の登録が必要で、無登録営業は刑事罰の対象です。あわせて利息制限法・出資法の上限金利を守る必要があり、年109.5%を超える利息の契約をした場合は消費貸借契約自体が無効になるとされています。

ファクタリングそのものの法的な位置づけはファクタリングとはで、違法・悪質業者の手口全般は違法・悪徳ファクタリング業者の見分け方で整理しています。

掲載24社の開示状況

ここからが本題です。当サイトは掲載24社について、公式サイトの記載を1社ずつ確認し、償還請求権の扱いが明記されているかどうかを記録しています。各社の公式サイトの確認日は、19社が2026年7月29日、2026年8月27日に追加した5社が同日です。

「償還請求権なし」を明記している16社

サービス 運営会社
AGビジネスサポート AGビジネスサポート株式会社
ベストファクター 株式会社アレシア
CoolPay(クールペイ) 株式会社エムライズ
DMCファクタリング 株式会社DMC(ディーエムシー)
Easy factor 株式会社No.1(ナンバーワン)
KENSHINファクタリング 株式会社シュクラン
labol(ラボル) 株式会社ラボル(labol inc.)
メンターキャピタル 株式会社Mentor Capital
ネクストワン 株式会社ネクストワン
株式会社No.1 株式会社No.1
OTTI(オッティ) 株式会社オッティ
ペイブリッジ 株式会社トップ・マネジメント
ペイトナー ペイトナー株式会社
QuQuMo(ククモ) 株式会社アクティブサポート
RFD RFD株式会社
トラストゲートウェイ 株式会社トラストゲートウェイ

記載が見当たらない8社

サービス 運営会社
besus besus株式会社
エスコム 株式会社エスコム
ファクネット 株式会社アンカーガーディアン
KISマネジメント 株式会社KISマネジメント
レバンタ 株式会社レバンタ
プロテクトワン 株式会社プロテクト・ワン
資金調達本舗 株式会社M&H
財務再生支援センター 株式会社アクセルファクター

**この8社について、償還請求権があると述べているわけではありません。**各社の確認日(19社は2026年7月29日、2026年8月27日に追加した5社は同日)に公式サイトを確認した範囲では、償還請求権の有無に触れた記載が見当たらなかった、という事実だけを記録したものです。あるともないとも判断できない状態であり、だからこそ契約前に直接確認する価値がある、というのがこの一覧の使い道です。公式サイトの記載は更新されますので、調査時点のものとしてお読みください。

明記があっても「安全」とは言えない

一覧を見ると16社が明記していますが、**これを「16社は安全」と読まないでください。**金融庁は次のように述べています。

また、ファクタリングが貸金業に該当するかについては、契約書にノンリコース(売却した売掛債権等が返済不能になっても売却した事業者に返済義務は生じないこと)の規定があるかなどの形式的な要素だけでなく、経済的側面や実態に照らして判断されるものですので、注意が必要です。

つまり、契約書にノンリコースと書いてあることは形式的な要素のひとつにすぎず、それだけで貸金業に該当しないと決まるわけではありません。この一覧は、確認すべき項目が公式サイトで完結するかどうかを示すものであって、契約の安全性を保証するものではありません。

裁判所はどこを見ているか|金融庁が挙げる裁判例

金融庁は同じページで、ファクタリングが貸金業に該当するかが争われた裁判例を紹介しています。以下は金融庁が要約として掲載している内容をまとめたものです(判決文そのものは当サイトでは確認していないため、金融庁の要約の範囲を超える説明はしていません)。

貸金業に該当しないと判断された事案

裁判所・判決 金融庁が挙げる考慮要素
東京地裁 令和2年9月18日 償還請求権を有しておらず、債権の買戻しを予定していないことなどから、実質的にも不払いリスクが業者に移転していると評価できること
東京高裁 令和4年6月15日 回収できなかった額につき売主が責任を負うものとされておらず、無資力の危険の負担が業者に移転したと認められること

貸金業に該当すると判断された事案

裁判所・判決 金融庁が挙げる考慮要素
大阪地裁 平成29年3月3日 業者が不払いリスクをほとんど負っていない、債権の額面とは無関係に金員の授受がされていた
東京高裁 令和3年7月1日 債務者が弁済しなかった場合に売主が債権額以上の金額を支払う旨の公正証書を作成するなど、業者が負担すべきリスクを負っていない
名古屋地裁 令和3年7月16日 売主は債務者の資力を担保しないと規定されているものの、譲渡債権の性質や期間の短さから不履行の可能性が極めて低い
札幌高裁 令和4年7月7日 売主が何としてでも買戻期限までに買い戻さなければならない状況にあったことを業者も認識していた
東京地裁 令和4年3月4日 ノンリコースの規定は設けられているものの、不払いの兆候等がないことを売主が表明保証することとされており、売主に債務の保証を求めているのに等しい

最後の東京地裁令和4年3月4日が、前節の結論を裏づける事案です。ノンリコースと書いてあっても、別の条項で実質的に売主に責任を負わせていれば、金銭消費貸借契約に該当すると判断されています。読むべきは「ノンリコース」の4文字ではなく、契約書全体です。

なお、これらは事業者向けのファクタリングをめぐる事案です。個人の給与を対象とする「給与ファクタリング」については、最高裁令和5年2月20日第三小法廷決定が、実質的には返済合意がある金銭の交付と同様の機能を有するとして、貸金業法2条1項と出資法5条3項にいう「貸付け」に当たると判断しています(金融庁が抜粋を掲載)。事業者向けのファクタリングとは別物です。

契約書のどこを見るか

以上を踏まえると、契約前に確認すべきことは次のように整理できます。

  1. 「買戻し」「遡求」「償還」「保証」「表明保証」の語を探す — 見出しが「ノンリコース」でも、別の条項で実質的に責任を負わせている場合があります
  2. 売掛先が支払わなかったときに誰が支払うのかを、書面で確認する — 口頭の説明だけで進めない
  3. 回収(集金)を自分が代行する契約かどうかを見る — 代行したうえで集金できなければ自分が払う、という構造は金融庁が名指しで挙げている型です
  4. 手数料を年率換算してみる — 額面と買取代金の差が大きすぎないかは裁判例でも考慮要素として挙がっています。実質年率シミュレーターで確認できます
  5. 相手が登録貸金業者かどうかを確かめる必要が出たら、金融庁の登録貸金業者情報検索サービスで調べる

急いでいるときほどこの確認が飛びます。当日中の資金化を目指す場合の段取りは即日ファクタリングのガイドにまとめました。

償還請求権なしでも残る負担

ノンリコースであっても、利用者側の負担がゼロになるわけではありません。

2社間ファクタリングでは、売掛先からの入金を利用者がいったん受け取り、ファクタリング会社へ送金する形が一般的です。この送金の振込手数料を利用者負担としている会社があります。少額の申請を繰り返す使い方では、この分が実質的な負担率に効いてきます。

また、償還請求権が無いことと、利用者自身の落ち度に対する責任が無いことは別です。虚偽の申告や二重譲渡があった場合には、契約に基づいて責任を問われることがあります。

手数料そのものの水準と内訳についてはファクタリングの手数料相場で、掲載24社の公表値を出所として整理しています。

迷ったときの相談先

契約条件に不安が残る場合、契約前に相談してください。金融庁も「ファクタリングを利用する事業者の方も、ファクタリングを提供する事業者の方も、少しでも心配な点があれば、法律の専門家である弁護士に相談するなど、違法な取引が行われないよう、ご留意ください」と呼びかけています。

  • 金融庁 金融サービス利用者相談室(平日10:00〜17:00)電話 0570-016811
  • 消費者ホットライン 188(最寄りの消費生活相談窓口につながります)
  • 警察相談専用電話 #9110
  • 日本貸金業協会 貸金業相談・紛争解決センター 電話 0570-051051

税務・会計・法務の個別の判断については、顧問税理士や弁護士にご確認ください。当サイトの調査方針と運営者情報は運営者情報に記載しています。

よくある質問

「償還請求権なし」と書かれていれば、取引先が倒産しても返金を求められませんか?

償還請求権なし(ノンリコース)とは、売却した売掛債権が回収不能になっても、売却した事業者に返済義務は生じないという意味です。契約にその定めがあれば、売掛先の倒産による損失はファクタリング会社が負うのが原則です。ただし、利用者が虚偽の説明をした、同じ債権を二重に譲渡した、といった利用者側の落ち度がある場合は別に責任を問われることがあります。実際の線引きは契約書の文言によって変わるため、条項を確認し、判断に迷う場合は弁護士にご相談ください。

ノンリコースと明記されていれば、その契約は安全ですか?

そうとは言い切れません。金融庁は、ファクタリングが貸金業に該当するかについて「契約書にノンリコース(売却した売掛債権等が返済不能になっても売却した事業者に返済義務は生じないこと)の規定があるかなどの形式的な要素だけでなく、経済的側面や実態に照らして判断されるものですので、注意が必要です」としています。実際に、ノンリコースの規定がありながら金銭消費貸借契約に該当すると判断された裁判例(東京地裁令和4年3月4日判決)も金融庁が紹介しています。明記は確認の出発点であって、それだけで結論にはなりません。

契約書に償還請求権の記載が見当たらないときはどうすればいいですか?

記載が無いこと自体が直ちに問題とは限りませんが、回収できなかったときに誰が損失を負うのかは契約の根幹にあたる部分です。「買戻し」「遡求」「保証」「表明保証」といった語がどこかに置かれていないかを通して読んだうえで、売掛先が支払わなかった場合に自分が支払う義務を負うのかを、書面で回答するよう求めてください。口頭でしか答えない、書面化を渋るといった対応が返ってきた場合は、契約を急がないことをおすすめします。

償還請求権なしだと手数料は高くなりますか?

リスクを引き受ける対価として手数料に反映されるという説明はありますが、当サイトが掲載24社の公表値を突き合わせた範囲では、償還請求権の開示状況と手数料水準のあいだに一定の関係を示すことはできませんでした。手数料を公表していない会社があること、公表していても下限のみで上限を示していない会社があることが理由です。したがって当サイトは、この点について断定的なことは書きません。手数料の水準そのものについては手数料相場のガイドで整理しています。

掲載24社のうち8社が「記載なし」なのは、償還請求権があるという意味ですか?

違います。当サイトが各社の公式サイトを確認した範囲で(確認日は19社が2026年7月29日、2026年8月27日に追加した5社が同日)、償還請求権の有無についての記載が見当たらなかった、という意味にすぎません。記載が無いことは、償還請求権が設定されていることを示すものではありませんし、設定されていないことを示すものでもありません。実際の契約条件は個別の契約書で決まりますので、申し込み前に直接確認してください。なお公式サイトの記載は更新されるため、この一覧は調査時点のものです。

買戻しを求められたら、その契約は違法ですか?

直ちに違法と決まるわけではありませんが、金融庁は、譲渡した債権の回収が売主に委託されていて、売主が集金できなかった場合に「売主が債権を買い戻すこととされている」「売主自身の資金によりファクタリング業者に支払をしなければならないこととされている」といったものについては、貸金業に該当するおそれがあるとしています。貸金業を行うには財務局または都道府県の登録が必要で、無登録営業は刑事罰の対象です。心当たりがある場合は契約前に弁護士へ相談してください。